中休み

実家にいるので中断中です、夏の漫画祭り。

モモ (岩波少年文庫(127))

モモ (岩波少年文庫(127))


本来はフルサイズ版で読むべきだと思いますが。
ああ、文庫版を読むあたり、私も「時間貯蓄家」なのかしら…


はじめのうちは気がつかないていどだが、
ある日きゅうに、なにもする気がしなくなってしまう。
なにについても関心がなくなり、
なにをしてもおもしろくない。
この無気力はそのうちに消えるどころか、
すこしずつはげしくなってゆく。
日ごとに、週をかさねるごとに、ひどくなる。
気分はますますゆううつになり、
心のなかはますますからっぽになり、
じぶんについても、世のなかにたいしても、
不満がつのってくる。
そのうちにこういう感情さえなくなって、
およそなにも感じなくなってしまう。
なにもかも灰色で、どうでもよくなり、
世のなかはすっかりとおのいてしまって、
じぶんとはなんのかかわりもないと思えてくる。
怒ることもなければ、
感激することもなく、
よろこぶことも悲しむこともできなくなり、
笑うことも泣くこともわすれてしまう。
そうなると心のなかはひえきって、
もう人も物もいっさい愛することができない。
ここまでくると、もう病気はなおる見こみがない。
あとにもどることはできないのだよ。
うつろな灰色の顔をしてせかせか動きまわるばかりで、
灰色の男とそっくりになってしまう。
そう、こうなったらもう灰色の男そのものだよ。
この病気の名前はね、
致死的退屈症というのだ。
(エンデ『モモ』P.360)